社会福祉法人兵庫県姫路市の特別養護老人ホーム しかまの里のホームページへようこそ!敬寿会
しかまの里のミニ情報

認知症サポーター

日本経済新聞 2009年8月9日(日) より

介護保険制度は使いにくくなる一方だとの利用者らの不満の声が強まっている中で、地域住民の助け合いによって介護が必要な高齢者を支えようとする動きが広がっている。介護保険だけには頼らず、保険の外でどこまで支えることができるのか。現状と課題を探った。

◆ 地域助け合いどこまでカバー ◆

7月下旬の日曜日。東京都板橋区にある清水町第2集会所には炎天下にもかかわらず、中高年を中心に地域住民およそ100人が集まった。認知症について学び、認知症の人やその家族を支えるための「サポーター(支援者)」となるための講座が聞かれたのだ。

まず地元で開業する天木聡医師が講演。「認知症とは脳の萎縮や脳細胞の死によって記憶障害などが起こり、日常生活に支障が出る状態です」。天木医師は具体的な症状や予防策、認知症の人には自尊心を傷つけない対応が必要であることなどを総合的に解説した。

後半は寸劇。さっき食事したばかりの認知症高齢者にふんした人が「腹が減った。なにか食わせろ」と叫ぶ。これに対し「さっき食べたばかりでしょ」としかる家族役。「これは悪い例」と司会の解説が入る。コミカルな演技に会場が沸く。今度は家族役が「今つくりますから、その間に洗濯物をたたんでおいてもらえますか」とほほ笑みながら話しかけた。司会者は「これがよい例。話題を変えて待っている間に忘れてもらいましょう」と説明した。

講座の最後、「認知症のことが少しでもわかったという人は?」との司会者の問い掛けに、参加者の大半が手を挙げた。


寸劇で認知症を理解してもらう試み

受講者100万人超

この講座は板橋区と地域住民でつくる「おたがいさまネットワーク」が共同で開いた。同ネットワークは子供から高齢者までが安心して暮らすために地域で支え合おうと、住民が今春、つくったボランティア組織。代表の加藤友子さんは「サポーターがいれば地域で高齢者を見守ることができる」と期待する。
 
「認知症サポーター養成講座」は全国で頻繁に開かれている。厚生労働省が2005年度から「認知症を知り地域をつくる10カ年」構想の一環として始めており、行政や自治会などが講座を主催する。無料で2時間程度の講義を受ければ、受講のしるしとして手首につけるオレンジ色のリングが渡される。受講者はすでに100万人を超えた。

この事業の運営を国から請け負っている全国キャラバン・メイト連絡協議会の菅原弘子事務局長は「支え方を学べば、認知症は施設に入らなくてもある程度地域で支えられる」と話す。「あらゆる介護サービスを介護保険で提供していては財政がもたない」との厚労省の思惑も背景にある。

住民だけでなく、地域で住民と接する事業者がサポーターになる例も増えている。東京都武蔵野市ではゴミ収集業者の従業員が昨秋から講座を受講。その一社、武蔵野美装では「対応の仕方がわかり、収集中に様子がおかしい高齢者を見つけたときは声をかけるように心掛けている」(小玉定男営業部長)という。

自治会や地元企業 協力広がる

地域の助け合いがシステムとして動きつつある地域も出てきた。栃木県真岡市。市内の並木区と呼ばれる地域で昨秋から「災害時要援護者支援事業」が始まった。民生委員らが中心となり、地域内の介護が必要な高齢者などを把握。本人や家族の合意を得た上で一人ひとりに支援者を決め、地震などの災害時にはこの支援者が助けに向かう仕組みだ。支援者は隣近所の人たち。区長から「依頼状」も出る。

対象となりそうな約40世帯の大半は合意を取り付けた。「高齢者と支援者が人間関係を深め、日ごろからさりげない見守りができるような形になれば望ましい」と田中正夫区長は話す。


地図を見ながら高齢者世帯の状況を
話し合う自治会関係者

介護についての相談窓口である市の地域包括支援センターや県もこの事業に注目しており、地域と行政が連携して高齢者を支えていく形を探り始めた。

真岡市はインターネットの地図上に認知症を支える施設がどこにあるかを示す「認知症地域資源マップ」をつくるなど以前から取り組みが熱心。認知症サポーターも多い。「地域に力があれば、できる限り長く高齢者が自宅で暮らせるだけでなく、認知症の進行を抑えることも可能ではないか」(地域包括支援センターの綱島弘子さん)という。

全国どこでも助け合いの基盤があるわけではないが、住みよい地域づくりに住民が参加することには意義がある。サポーター講座や住民の自主的な活動について関心があれば、地元自治体の福祉部局などに問い合わせてみるのも一つの手だ。

ボランティア頼み限界も
介護保険の役割 明確化が必要

東京都で暮らす安楽寿子さん(71)は病気のために目が見えない。介護保険の要介護認定を受けたところ、比較的軽度の「要介護2」。週に3回、介護ヘルパーを使ってなんとか一人暮らしをしている。そんな生活の中で一番困るのは月に2〜3回の病院通いだ。

介護保険でヘルパーが通院に付き添うことは可能。ただし基本的には病院の外まで。病院では公的医療保険を使うので、介護保険との併用は認められないとの理屈だ。しかし安楽さんには院内での付き添いも不可欠。役所の介護担当者は「院内ではボランティアなどを利用してほしい」というが、都合よくいつも見つかるわけでもない。

以前利用していた介護事業者のヘルパーは病院に着くなり「あとは一人でお願いします」と帰ってしまった。看護師にタクシーを呼んでもらい、運転手に住所を伝え探してもらってやっと帰宅したこともある。

今は院内では介護保険を使わない全額自費のヘルパーを利用する。NPO法人「東京山の手まごころサービス」のヘルパーだ。同法人は介護保険を使えない場合のために1時間約2000円と比較的低料金でサービスを提供している。とはいえ、主に障害年金で幕らす安楽さんには重い負担だ。

散歩の付き添いや家族がいる世帯の掃除や洗濯は原則認めないなど、自治体にもよるが、介護保険の制約は多い。財政が厳しいためだが、中には必要な人もいる。同法人の西野智子副代表理事は「介護保険は使いにくくしておいて、あとはボランティアでお願いという国の姿勢は無責任」と指摘する。

なし崩し的に介護保険を縮小し、代わりにカネのかからない地域住民の助け合いやボランティアに頼ろうというのでは広く理解は得られない。地域の力を十分に発揮してもらうためにも、介護保険でどこまで支えるのか明確にする必要がありそうだ。  (編集委員 山口聡)


「しかまの里のミニ情報」に戻る

 

Copyright (c) 2004-2012 Shikamanosato All Right Reserved.