介護保険の事業者への報酬が四月から変わる。3年ごとの見直しで、今回初めて総額で3%の増額となった。介護従事者の給与改善のためだ。ただ、改定の中身は複雑でわかりにくい。どんな場合に負担が重くなるのか、サービスは充実するのか。利用者からみた問題点を探った。
「自己負担が1割で済む上限いっぱいまでサービスを使っている。このままだと4月から上限を超え、全額自己負担分が生じてしまう。どうサービスを調整したらいいか」
ケアマネジャーのAさんは頭を抱える。利用者のBさん(88)は、脳梗塞(こうそく)の後遺症と認知症で「要介護4」の認定を受けている。週1回、デイサービスに通い、他の日は訪問介護のヘルパーが朝、昼、夕方に手助けする。同居する娘(50)が残業や出張で多忙のため、緊急の夜間訪問もよく頼む。
「自己負担が1割で済む上限いっぱいまでサービスを使っている。このままだと4月から上限を超え、全額自己負担分が生じてしまう。どうサービスを調整したらいいか」 |

認知症ケアでグループホームへの期待は高いが… |
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ケアマネジャーのAさんは頭を抱える。利用者のBさん(88)は、脳梗塞(こうそく)の後遺症と認知症で「要介護4」の認定を受けている。週1回、デイサービスに通い、他の日は訪問介護のヘルパーが朝、昼、夕方に手助けする。同居する娘(50)が残業や出張で多忙のため、緊急の夜間訪問もよく頼む。
今回の改定で、Bさんがよく使う三十分未満のトイレ介助などの「身体介護」の介護報酬の基本額は、2310円から2540円に10%上がった。しかし、自己負担が一割ですむ上限枠(要介護4の場合、30万6000円)は変わらない。このため同じサービスを受けようとすると総額が上限を突破。超えた分は全額自己負担になうってしまうのだ。
「娘さんはこれ以上、負担を増やすのは無理だという。毎週実施してる訪問リハビリの効果で歩行しやすくなったが、上限内に抑えるためには、その回数を減らすしかない」。Aさんはケアマネとして苦渋の選択を迫られる。今回の改定は、全体としては三%アップ。引き下げられたものや現状維持のものもあるが、Bさんのように上限まで使っている場合は、超えないか注意が必要だ。
さらに注意したいのは、同じサービスを受けても、事業者によって利用者の負担額が違ってくる可能性が大きいこと。今回の改定では、夜勤や医療連携、重度者対応などのケアや介護福祉士の資格要件などによる報酬加算が、これまで以上に盛り込まれた。
事業所がどの加算を受けているかによって利用者の負担は違い、同じ事業所のサービスでも資格保侍者の異動などで加算が変わる。一物多価」となり、利用者の選択肢が広がる一方で複雑になる。こうした改定も、介護サービスの基盤強化につながるなら納得がいく。ただ、認知症ケアの切り札といわれるグループホームの事業者からは、「事業継続すら危うい」という悲鳴が聞こえる。改定に先立つサンプル調査で、人件費が以前よりかかっていないと判断されたことなどから、一部地域で報酬が引き下げられたためだ。七種類の加算が新設されたが「取得しにくい」との声が強い。経営状態が悪化すれば、事業者の参入意欲が消え、認知症に悩む本人や家族が必要なサービスを受けられなくなる。特に減額になるのは「特甲地」と呼ばれる地域。東京都の三鷹、調布など二十三区外の市や、横浜、川崎、京都、神戸、大阪、堺など主要都市圈の五十市が特甲地。八王子、川崎など四ヵ所でグループホームを運営するノベライズ社の吉田正浩社長は「年間で三百万円も減収になる。役員報酬を引き下げざるを得ない」と表情を曇らせる。
悩むケアマネ グループホームに暗雲?
地域に密着した在宅サービスで利用者に好評な特定非営利活動法人(NPO法人)や有限会社の小規模事業所からも「ほとんど収入増につながらず肩すかしを食った」(三重県熊野市の「思いやり支援センターくまの」)などの声が上がる。
神奈川県の訪問介護事業者は「総収入は1%しか増えないのでヘルパーの時給を上げられない」と嘆く。今回の改定が、訪問介護やデイサービスなど在宅サービスより、大規模な施設での加算に重点が置かれたためだ。
利用者の相談相手として欠かせないケアマネジャーにとっては、どうだろうか。「相当手厚い措置をしたので、三、四人で独立して事業ができるようになったはず」と厚労省は胸を張る。ケアマネが事業者から独立できれば、より中立、公平な視点からサービスを選択でき、利用者にとっては好ましいことだ。
だが、現場からは「とても独立できるだけの収入増にはならない」(東京都介護支援専門員研究協議会など)の声が多い。1人のケアマネが担当する高齢者数は全国平均で27人。数年前の40人前後から大きく減っている。
前回の改定により、予防給付を受ける高齢者については、ケアマネではなく原則として自治体直轄の地域包括支援センターが担当することになったためだ。独立事業者のケアマネは約1割。これを増やすには、今回の改定では力不足かもしれない。(編集委員 浅川澄一)
| ■施設サービスは加算大きく■ |
施設サービスヘの加算は大きい。最も目を引くのは、老人保健施設の短期集中リハビリ加算。従来の1日600円が2400円へ4倍となった。1回20分以上で週3回、入所から3ヵ月月以内まで理学療法士など専門職が実施する。認知症高齢者も別枠で対象とし、従来の軽度者だけでなく中重度者や日帰りの利用者にも広げた。訪問診療で認知症ケアに取り組んでいる医師の中には「認知症ケアは生活の中で支えていく長期的なもので、短期療法の効果は疑問」とする声がある。そのなかでの大幅加算だ。特別養護老人ホームに多い大規模なデイサービスでは従来の減算措置が撤廃され収入増につながる。両施設には夜勤配置加算など多種類の加算が新設、増額された。立教大学の服部万里子教授は「厚労省は、廃止を決めた介護療養病床の転換を後押しするため、老人保健施設に手厚い処遇をしたのでは」と解説する。これまで同省が掲げてきた「在宅サービス重視」という基本政策が一時棚上げされた格好だ。 |
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