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しかまの里のミニ情報

07-広がる市民後見人

日本経済新聞(夕刊) 2008年3月25日(火) より

お年寄りや障害者の財産管理などを担う成年後見人の不足を受け、一般市民が担い手になる動きが広がっている。認知症のお年寄りの財産などを狙った事件や後見人の立場を悪用したトラブルは相次いでいる。そこで東京や大阪の自治体も研修制度を設け、市民後見人の養成に動く。頼れる人材は増えていくのか。

「最近元気なのでサークル活動をしたいみたい。参加費は出ますか」

東京都品川区の早水芙佐子さん(68)は時折、特別養護老人ホームからこんな連絡を受ける。後見人を務める野田恵子さん(仮名、91)についての相談。野田さんは軽い認知症のため、早水さんが財産を管理する。「1回200円なら大丈夫。参加させてあげて」と答えた。

成年後見人の延べ申立件数早水さんは東京都の成年後見人養成講座を修了し、昨年12月から活動を始めた。財産管理のほか月1回、野田さんを訪ね介護状況の確認も行う。「後見人の手伝いなどをして困っているお年寄りがたくさんいることを知った。会いに行くと喜んでもらえるし、やりがいを感じる」と話す。

お年寄りや障害者の生活の見守り役である成年後見人は、これまでは親族や弁護士が多かった。しかし、最近は早水さんのように一般の市民が担う動きが出ている。後見人の研修制度を設けた東京の世田谷区では30人が参加、大阪市でも44人が研修中だ。他の自治体でも同様の動きが広がる。

  

 
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背景には人材難がある。シニアルネサンス財団(東京・千代田)の河合和事務局長は「後見人が必要な認知症高齢者や障害者は500万人に上る」とみる。一方、全国の家庭裁判所への後見人申立件数は2006年度末までで123,321件にとどまる。

認知症などお年寄りの弱みに付け込んだ経済事件は続発しており、被害も深刻だ。東京に住む吉田恒一さん(同、77)が一人暮らしの弟(67)の異変を知ったのは昨年夏のこと。十分な年金があるはずなのに、アパートの家主から「家賃を滞納している。見知らぬ男が住み着いている」と連絡があったからだ。

訪ねると弟は認知症が進行しており、預金通帳や印鑑、年金証書がなくなっていた。何者かが財産を奪ったのは明らかだった。

親族が世話をしているからといって安心できないこともある。品川成年後見センター(東京・品川)では、年々寄せられる相談が増加。斎藤修一室長は「親族による経済的虐待の相談が多い」と話す。

東京の一人暮らしの女性(88)は家に転がり込んだ甥(おい)の息子にアパート経営の収入と国民年金を奪われ、アパートを担保に女性名義で借金までされた。

最高裁判所によると06年度末で後見人の8割が親族。日本成年後見法学会の大貫正男副理事長は「親族は利益相反の間柄。後見人としては望ましくない」と指摘する。その意味でも市民後見人に期待は高まる。

問題は信頼性の確保。東京の品川区や世田谷区、大阪市は社会福祉協議会(社協)が中心となり市民後見人を監督する制度を設け、チェックを強化している。

 
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世田谷区で市民後見人として活動する伊豆康夫さん(65)は、被後見人を訪問するたび、日時や財産収支の活動報告を社協に提出している。伊豆さんは「たいした手間ではないし、責任の重さを考えれば当然」と話す。早水さんも品川区の社協に報告書を提出。「監督する社協にわからないことを相談できるのでむしろ安心」という。

ただ、対策を進める一方で「後見人制度を悪用したトラブルも最近目立つ」と指摘するのは、司法書士らで運営する成年後見センター・リーガルサポート(東京・新宿区)の山崎政俊理事。

認知症などに備えたお年寄りが事前に定めた人物が、正式な後見人になる前に財産を奪った事件が起きている。財産の寄付を遺言書に書き入れることを条件に、後見人を引き受ける団体も現れたという。

ほぼ無報酬の市民後見人に、十分に報いる仕組みが必要との声もある。筑波大学法科大学院の新井誠教授は「現状はボランティア任せ。後見人が見合った報酬を受けられる仕組みにしなければ、信頼できる人材を確保するのは難しい」と指摘している。

 


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