年金制度は私たちの生活に密着したものですが、日本では5年に一度見直され、そのたびに多くの経過措置や特例などが設けられ、大変複雑な仕組みとなっています。
そこで、年金受給のために必要な知識、知らないで損をしないためのポイントをご紹介します。
社会保険労務士 中田谷 博文
公的年金の受取開始時期
原則として65歳から支給開始!
国民年金から支給される老齢基礎年金、厚生年金から支給される老齢厚生年金の受取開始年齢は、原則として65歳となっています。
厚生年金加入者の場合は特例として60歳から支給
ただし、老齢基礎年金の受給資格期間を満たし、厚生年金に1年以上加入されている方は、老齢基礎年金・老齢厚生年金を「特別支給の老齢厚生年金」として60歳から受け取ることができます。
この支給開始年齢は、段階的に引き上げられておりますが、その間も部分年金と言われる年金の一部分(報酬比例部分)が受け取れます。詳しくは【図1】の通りとなっておりますので、ご自分の生年月日と照らし合わせてご確認ください。
◆「特別支給の老齢厚生年金」65歳支給開始への移行スケジュール 【図1】
60歳台前半の在職老齢年金 ・・・働きながら年金を受け取れるの?
厚生年金の被保険者であるかどうかがポイントです
高年齢者雇用安定法の改正により定年年齢が引き上げられたことなどにより、働きながら年金を受給される方が多くなっています。60歳台前半の老齢厚生年金を受給している人が厚生年金の被保険者である場合、基本月額と総報酬月額相当額を合算した金額に応じて受取る年金額の一部または全部が支給停止になります。この調整された年金を「在職老齢年金」といいます。
調整の対象になるのは厚生年金の被保険者である方のみですので、退職して自営業をはじめた方などは、いくら所得が多くても年金が支給停止されることはありません。
◆支給停止額の計算方法
| 基本月額(A) |
総報酬月額相当額(B) |
支給停止額(月額) |
| 28万円以下 |
48万円以下 |
(B+A−28万円)÷2 |
| 48万円超 |
(48万円+A−28万円)÷2+(B−48万円) |
| 28万円超 |
48万円以下 |
B÷2 |
| 48万円超 |
(48万円÷2)+(B−48万円) |
| A 基本月額 ・・・老齢厚生年金の月額 |
| B 総報酬月額相当額 ・・・その月の標準報酬月額+その月以前1年間の標準賞与額÷12 |
| ※年金が全額支給停止になった時は加給年金額も支給停止されます。 |
年金額を増やす方法 ・・・なるほど!
付加年金をご紹介します
国民年金には、定額保険料に上乗せして月額400円の付加保険料を納付すると、その納付月数に応じて将来受給する老齢基礎年金に「付加年金」が加算される制度があります。「付加年金」は、2年間受給すると納付した付加保険料総額と同額となります。この制度を利用できる人は国民年金の第一号被保険者と60歳以上の任意加人被保険者のみで、将来の年金額を増やす方法のひとつとして有効です。
なお、「付加年金」は老齢基礎年金が支給停止された場合は同様に支給停止になり、繰上げまたは繰下げ請求した場合は老齢基礎年金と同じ率で減額または増額されます。
繰上げ・繰下げ受給制度 ・・・65歳以前または以降に受け取れるの?
繰上げ受給の場合は年金額が減額されます。
判断は慎重にしましょう。
老齢基礎年金の受給開始年齢は、原則として65歳とされていますが、仕事の状況や健康状態などによって、「65歳より早く受け取りたい」、逆に「もっと後からでいい」という方がいます。これに対応するのが「繰上げ・繰下げ受給制度」です。
繰下げ受給を選択した場合は、年金額は請求時の年齢に応じて増額され、金利ゼロの時代において、メリットと言えます。
反対に繰上げ受給の場合は、年金額が減額されます。繰上げ受給することでいくつかの制限もでてきますので注意が必要です。
これらの受給率は、加入者の生年月日と支給開始年齢によって変わります。(昭和16年4月2日以降生まれの人の場合※【図2】参照。)
◆繰上げ、繰下げの場合の受給率例 【図2】
以
降
生
ま
れ
の
人 |
昭
和
16
年
4
月
2
日 |
|
繰上げ受給の場合(注1) |
繰下げ受給の場合(注2) |
| 60歳〜60歳11ヶ月 |
70%〜75.5% |
66歳〜66歳11ヶ月 |
108.4%〜116.1% |
| 61歳〜61歳11ヶ月 |
76%〜81.5% |
67歳〜67歳11ヶ月 |
116.8%〜124.5% |
| 62歳〜62歳11ヶ月 |
82%〜87.5% |
68歳〜68歳11ヶ月 |
125.2%〜132.9% |
| 63歳〜63歳11ヶ月 |
88%〜93.5% |
69歳〜69歳11ヶ月 |
133.6%〜141.3% |
| 64歳〜64歳11ヶ月 |
94%〜99.5% |
70歳以上 |
142% |
(注1)60歳から70%、以降1ヶ月ごとに0.5%を加えた率
(注2)66歳以降、108.4%に1ヶ月ごとに
0.7%を加えた率(最大142%) |
平成19年度の主な改正点 ・・・なるほど!
年金分割って?
平成19年4月1日以後に離婚された場合に、その婚姻期間中の厚生年金の保険料納付記録を、当事者間で合意した割合に基づき分割することができる制度です。
ただし、単純に元ご主人(妻)の年金の半分が元妻(ご主人)のものになるというわけではありません。
ご注意
●婚姻期間中の納付記録のみ分割可能です。
●当事者の合意または裁判手続が必要です。
●分割割合の上限はお二人の納付記録合計の50%です。
●原則として離婚をした日の翌日から2年以内に請求することが必要です。 |
年金を受け取らないという選択?
御自身の判断で年金を受け取らないという選択ができるようになりました。
年金を受け取らない旨の申出や、受取りの再開をすることができます。ただし、この申出を行った場合の年金は、あとでまとめて支給されると言うわけではなく、増額されることもありませんので選択には注意が必要です。
70歳以上でも年金が支給停止?
70歳以上の方も、厚生年金の適用事業所にお勤めの場合、老齢厚生年金と賃金の合計額が48万円を上回るときは、老齢厚生年金の全額または一部の額が支給停止となります。ただし、昭和12年4月1日以前にお生まれの方は、対象となりません。
従来から、60歳代で厚生年金の被保険者としてお勤めの場合、老齢厚生年金の一部または全部が支給停止されるという制度がありますが、これが70歳以上の方にも広がりました。お勤めの場合でも厚生年金保険の保険料を納める必要はありません。
|