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新聞のコラムから

07−いざ!オトコの介護

日本経済新聞 2008年8月3日(日) より

超高齢社会を迎え、男性も親や妻の介護を担う可能性が高まっている。今や介護をする人のうち男性の割合は約3割。仕事との両立から、慣れない家事の苦労や地域との付き合い方まで「男性ならでは」の難しさもある。「オトコの介護」の現状と備え方をまとめた。

「これからは二人で全国を旅行しようと計画していたのに」。横浜市に住む中沢照好さん(79)は残念がる。妻(73)が脳梗塞(のうこうそく)で倒れたのは3年前。リハビリで回復に努めたが、いまだに左半身にまひが残る「要介護2」。着替えや食事は何とか自力でできるが、生活全般にわたって手助けが必要だ。

男性介護者は28%

「介護はされるものと思っていた。まさか自分がするとは」と中沢さん。お茶一杯入れるにも妻任せの生活が一変し、3度の食事づくりから洗濯、買い物まですべてが自分の肩に。学生時代の自炊経験を頼りに苦労した結果、今では何とか家事全般をこなせるようになった。「男性はまず自立した生活を送らないと、いざという時に介護どころではない」と忠告する。

立命館大学の津止正敏教授によると、介護する人のうち男性の割合は2004年時点で28%。都市部では既に30%を超え3人に1人に迫るとみられる(グラフA参照)。40年前には5割を占めた嫁など「子の配偶者」が23%まで半減したのと裏表の関係だ。一方で介護疲れからの心中や殺人、虐待などの事件が後を絶たない。殺人の加害者の約7割が息子や夫とのデータもある。

津止教授は男性介護者について「仕事との関係や、家事など生活技術の欠如などから、女性の介護者と比べ行き詰まりやすい」とみる。表Bに男性介護者が直面する問題の一般的な傾向と対策をまとめた。



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まず働き盛りの男性の場合に問題になるのが仕事との両立だ。会社員の場合、「介護のため休みが欲しい」とは言いづらい。ほとんどが有給休暇や遅刻、早退などで時間をやり繰りしているのが現実だ。だが「介護休業」は労働者の正当な権利。育児・介護休業法で定められている。

要介護者一人につき一回、最長93日までなど制限はあるが、上乗せして制度を充実させている企業もある。まずは会社の制度を調べて堂々と利用しよう。介護休業の取得を理由にした解雇、配転は禁止されている。雇用保険から原則、休業開始時点の40%の賃金が支払われる「介護休業給付金」制度もある。

次の関門が家事に必要な生活技術。公的介護保険の要介護の認定を受ければ、家事に関するサービスが1時間当たり約2,000円(自己負担はその1割の約200円)で利用できる。だが最近は同居者がいると、同サービスを受けられないケースが増えている。社会保障費を圧縮するため、介護保険の窓口である自治体が利用を抑えているのが原因だ。

一方で厚生労働省は「同居家族の存在を理由に一律、機械的にサービスの利用を制限しないよう指導している」。市民福祉情報オフィス・ハスカップを運営する小竹雅子さんは「一度断られても、あきらめずに困難な理由を説明すると通る例もある」と言う。

行き詰まり防ぐ

介護保険以外のサービスを活用する手もある。茨城県の大手電気会社に勤務する金子剛さん(仮名、59)は特定非営利活動法人(NPO法人)、ニッポン・アクティブライフ・クラブ(NALC、大阪市)の「時間預託制度」を利用する。金子さんが地元で行うボランティア活動が「1時間1点」に換算されて貯金のようにたまる。必要になったら点数分のサービスを受けるために引き出せる。

金子さんは東京で離れて独り暮らしをする母(83)のために4月から引き出し始めた。母は認知症の症状が出始めたが、自宅を離れたがらず「自分が東京に通うにも限度がある」。母の家近くに住むNALCのボランティアが週に2回、見守りも兼ねて掃除やちょっとした家事を手伝う。

仕事の延長で介護にもきまじめに取り組み行き詰るのが早いのも男性の特徴。時には愚痴もこぼしたり息を抜いたりも必要だ。「そんなのまだいい方さ。うちなんて……」。男性ばかり約20人が2カ月に1度集まって介護に関して学ぶ荒川区男性介護者の会(オヤジの会、東京・荒川)。一通り勉強が済むとアルコールの出番。飲みながら語り合う。会長で、8年間妻を介護した荒川不二夫さんは(81)は「プライドの高い男性が心を開いて介護の話をするにはこういう場が必要」と話す。

ちょっと目先は違うが「これから」に備えられる行政の取り組みも始まった。東京の稲城市では65歳以上を対象に介護関連ボランティアのポイント制を始めた。介護施設で配膳などをすると、1時間の活動でスタンプが1個たまる。10個で1,000ポイントとなり1,000円に換算。年最大5,000円まで自分の介護保険料に充当できる。世田谷区や足立区など他の自治体にも同様の仕組みが広がりつつある。


膨らむ介護費用  民間保険で万一に備え

いざというとき、やはり助けになるのがおカネ。公的介護保険のサービスは利用者の一割負担が原則で、最も重い「要介護5」で限度額いっぱい使った場合の利用者負担は月4万円弱になる。さらに公的保険の対象にはならないサービスの利用が必要なことも多い。

そんな介護にかかわる支援に備えるのが、民間の介護保険だ。表Cに代表例をまとめた。これらは自分が要介護状態になったときに保険金が下りるもの。親などの介護に備える保険も以前はあったが「不払い問題による商品見直しで新規に入れるものはなくなった」(ファイナンシャルプランナーの竹下さくらさん)。


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現在50〜60歳代の人は間近に親の介護の問題を抱える一方で、自分の老後に備える必要もある。もちろん貯蓄でも対応できるが、介護費用の問題点は「終わりが見えない」こと。要介護状態は数カ月かもしれないし、10年以上寝たきりとということもあり得る。その点、終身保険であれば必要なだけ継続的におカネが入る安心感はある。竹下さんは「退職金が入ったら一時払いで100万円程度を保険に振り向けておけばある程度“介護リスク”をヘッジできる」と指摘する。

選ぶときは「どんな状態になったときに」「どのくらいの期間続いたら」保険金が下りるのかをチェックしよう。当然、利用者は軽い養護状態から保険金が支払われる方が有り難いが、その分保険料は高くなる。良く比較検討してみるといいだろう。(山本由里)


 


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